ちうにちを考える

中日ドラゴンズを浅く薄く考えます

ギアチェンジ

◯1x-0(33勝39敗)

 

開幕72戦目にして初となるサヨナラ勝利は二死一、三塁からのワイルドピッチという拍子抜けの結末によってもたらされた。ただ、後逸ではなく横に弾いてのワイルドピッチは走者にとって判断が難しい。一瞬でも判断が遅れれば命取りになる場面で、クロスプレイにすらならずに悠々生還したのは極めて高度な集中力、判断力、そして瞬発力を併せ持つ平田だからこそ成せる技であった事は強調しておきたい。

 

藤井ならよそ見しててスタート切り損ねだろうな

 

いんや、スタートは切っても途中でコケるのが藤井クオリティだ

 

先発投手のお手本のような投球

 

おそらく明日の中日スポーツ一面はバケツの水を浴びる高橋周平の写真が使われると思うが、このサヨナラ勝利が先発・柳の熱投によってもたらされた事には疑いの余地もない。交流戦で3勝をあげて一気にブレイクした感のある柳が、リーグ戦でも引き続き圧巻の投球を見せた事で、いよいよ“本物”と認めても差し支えない段階に来た。

前回登板時の記事で「柳は抑えるコツを掴んだのかもしれない」と書いたが、今日はさらに一回りレベルが上の投球を見せてくれた。前回と同じく投球の軸はスラッター。交流戦前よりも数段キレ味を増したこの決め球は、打者から見れば「打てる」と思ったボールが手元で消えるような錯覚に陥るのだろう。奪った10個の三振のうちに9個が空振りである事がそれを物語っている。

また、ラジオで解説を務めていた岩瀬氏も指摘していたが、今日の柳はとにかく早いカウントからこの決め球を投じていたのが印象的だった。スコアを振り返ると、のべ28人との対戦で3ボールまで行ったのは4度だけ(四死球なし)。臆さずにどんどん勝負する事でテンポを作り、球数も少なく長いイニングを投げられるという先発投手のお手本のような投球だ。追い込んでからの決め球が無く、球数が嵩(かさ)んで自滅するかつての柳の姿はもうない。“打者を自在に翻弄できる投手”、もう柳はその境地に至りつつある。

 

窮地でのギアチェンジ

 

なかでも今日の全投球でベストだと思ったのが73球目。6回表、一死三塁から高橋遥から空振り三振を奪った、この日最速146キロの速球だ。

この1球前、外角低めの際どいコースをボールと判定されカウント3-2とした柳は、マウンド上で苦笑いを浮かべた。2球で簡単に追い込んでからの、しかも投手相手の四球は痛すぎる。かと言って安易に置きに行けば何が起きるか分からないのが前進守備の怖さ。絶対に制球ミスが許されず、なおかつ質も求められる次の一球はこの試合の命運を左右しかねない。その場面で寸分の狂いもなく低めにスバッと投げ込み、しかも今日最速を計測するのだから恐れ入った。

その後、近本からも三振を奪ってこの日唯一にして最大のピンチを脱した柳は声をあげてガッツポーズを作った。窮地になればなるほどギアを上げ、気合の入ったボールを投げ込む。その姿は、まるで同じ明大卒の大先輩・川上憲伸を見ているようだった。