ちうにちを考える

中日ドラゴンズを浅く薄く考えます

ホームランテラスを考える その2

●2-16(28勝37敗)

 

どんな事だって最初は難易度の低いところから始めるのが肝心だ。慣れてきたり、実力が付いて物足りなくなってきたら徐々に難易度を上げ、気付けば自分でも驚くほど高い壁を超えられるようになる。そうやって人は成長していくものだ。

例えば棒高跳びの代表選手だって最初から6メートルのハードルを越えられたわけではなく、初めは2メートルとか3メートルから挑戦し、年月をかけて6メートルを跳べるようになったはずだ。いきなり高すぎる壁を掲げても成長の障害にしかならず良くない。身の丈にあった壁を超える体験の積み重ねこそが、結果として人を高みへと連れていくのである。

そんなわけで今日の試合。ライオンズの打者がピンポン球のようにホームランや長打を打ちまくるのを目の当たりにし、唖然としたと同時に“ある確信”を得た。かつてドイツを東西に分けたベルリンの壁のように、スタンドとフィールドを隔てる分厚く高いナゴヤドームのフェンス。やはりこのフェンスは、今すぐにでも取っ払うべきである

 

非生え抜きは20号をクリア

 

広大な外野と高すぎるフェンスを誇るナゴヤドームは12球団一ホームランが出にくい球場と知られ、開場以来30号の大台に乗った生え抜き選手は天才・福留孝介ただ一人。それどころかドラフト会議を経て入団した中では20号でさえクリアした選手は山﨑武司と森野将彦しかいない。もちろん他球団には見られない極めて特殊な現象であり、偏(ひとえ)にナゴヤドームの弊害と言えるだろう。

だが面白い事に他所からFA等で入団した選手はこの限りではなく、谷繁元信、中村紀洋、和田一浩はいずれもドラゴンズのユニフォームを着てシーズン20発以上のホームランを記録した。つまりナゴヤドームは極めてホームランが出にくい球場ではあれど、打つコツを習得した打者であれば20発以上打つのも可能という事である。

今年、ナゴヤドームで行われた28試合でドラゴンズの選手が打ったホームランはわずか9本。対してライオンズの選手達はたった1試合で3分の1にあたる3本のホームランを打った。彼らはホームランの打ち方を熟知している。日頃から西武ドームというパークファクターの高い球場で気持ちよく打っている彼らにしてみれば、多少距離が伸びてフェンスが高くなったところでスタンドまで飛ばす事自体は大して難しくないのだろう。

一方で入団時点からナゴヤドームとの戦いを余儀なくされる生え抜き若竜は自然とこの球場でホームランを打つ事をあきらめ、軽打を追い求めるようになる。今年高橋周平が「自分はホームランバッターではない事に気付いた」と話していたが、この言葉は紛れもなくナゴヤドームに言わされたものだ。そして同じくホームランが出にくい球場として知られたZOZOマリンスタジアムは今年からホームランラグーンが設置され、早くもロッテは昨季一年間の本数に匹敵するホームランが飛び出しているそうだ。

 

テラスをめぐる報道を振り返る

 

では現場サイドはどう感じているのか。6月16日の中日スポーツで与田監督がホームランテラス設置を熱望している事が明かされた。

 

 「僕は球団につくりましょうと伝えているよ。行っただろ!って打球がフェンス際で捕られると、お客さんもがっかりするでしょ。ホームランをたくさん打てる打者が何人もいればいいけど、現状はそうではない。チームが強くなるという意味でもね」
 ナゴヤドームにもテラスやラグーンを。与田監督が賛成だと明言した。加藤球団代表も「個人的には以前から興味がありますし、慎重に検討していきたいと考えています」と前向きだ。

6月16日付 中日スポーツ「龍の背に乗って」より

https://www.google.co.jp/amp/s/www.chunichi.co.jp/amp/chuspo/article/dragons/news/201906/CK2019061602000250.html

 

記事によれば過去に検討された際には「野球が変わる」という反対意見が押し切り実現には至らなかったのだという。

一方で2017年12月28日に中日スポーツに掲載された「ナゴヤDの構想は検討段階で頓挫」という記事を読むと、2013年に球団首脳の発案でテラス設置が検討されるも“観客を誘導する出入り口の問題や観客の安全性などがネックとなり、検討段階で頓挫した”とある。またCBCラジオ「スポ音」でこの話題が出た時には“緊急車両の経路確保の問題で難しい”と若狭敬一アナが説明しており、結局どれが真相なのか判然としないところではある。

ただ、大本営の中日スポーツがこのタイミングで設置を後押しするような記事を載せているあたり、決して不可能というわけでは無さそうだし、先週には野球中継の中でCBCのアナウンサーが山田久志氏にテラス設置の是非を問うて「私は絶対に賛成」という言質を取る事にも成功している。本当に設計上の問題で実現困難なのであれば地元メディアがこのように設置を促すような内容を発信する事も無いのではないか。

現場の長である与田監督と背広組トップである球団代表が前向きな姿勢を示し、機関紙がそれを大々的に報じた以上、球団も何かしらのアクションを起こす可能性は高い。技術と意識の革新によりホームランが急増している昨今の野球界。トレンドを追い求める事だけが正解とは言わないが、意固地になって時代に取り残されるような事は避けなくてはいけない。