ちうにちを考える

中日ドラゴンズを浅く薄く考えます

夕刻の肖像

9回、中日ファンの脳裏に悪夢がよぎった。

新クローザーへの道を邁進する鈴木博志だが、今日は簡単に2死を取ってから試練が待っていた。渡邊佳明が9球粘って四球を選ぶと、続くオコエ瑠偉の当たりはなんでもないセカンドゴロ。誰もが試合終了だと思ったその瞬間、亀澤恭平のファンブルにより一転してピンチが拡大してしまう。

漂う不穏な空気。昨年、幾度となく見てきた嫌な展開だ。さらにブラッシュにもタイムリーを打たれると、雰囲気はもう完全にあきらめムードだ。

だが考えてもみれば、味方がエラーをしたくらいで崩れるようではクローザーなど務まるはずもない。一流の投手というのは味方のエラーすらも一身に背負い、チームの危機だけでなくエラーした当人をも救ってみせる。そのくらい圧倒的な存在になってこその真のエースであり真のクローザーなのだ。

 

川上憲伸や岩瀬仁紀はまさにそういう存在だったね

 

平成最後の怪物・奥川恭伸

 

ドラゴンズが絶体絶命のピンチを迎えたのとほぼ同じ時、甲子園球場では星稜・奥川恭伸がこの日最大のピンチを迎えていた。

運命のいたずらか、開会式のわずか5時間後に早くも実現した星稜と履正社という優勝候補同士の顔合わせ。事実上の決勝戦ともいわれるこのカードは、奥川の圧巻の投球により2-0というスコア以上に星稜優位に進んでいた。

ところが8回、2死一塁からサード知田爽汰の悪送球でピンチ拡大。しかし奥川は慌てず動じず、エラーをした知田爽汰に声をかけると、代打・田上奏大を空振り三振に斬って見事にピンチを脱した。

試合後、奥川はこのピンチをこう振り返った。

「普段通り、冷静にできた。ピンチでも逃げない姿勢を見せることができた」

さすが、早くも今秋のドラフトで競合が確実視されるだけのことはある。16個目の三振を取り、叫びながらガッツポーズする姿はエースそのものだった。

 

開幕のクローザーは鈴木博

 

舞台をナゴヤドームに戻そう。1点差に詰め寄られ、なおも2死一、三塁。同点までは覚悟という瀬戸際で、鈴木博は開き直ったかのように真ん中やや内角寄りに150キロの直球を投じる。ショートゴロでゲームセット。昨年ならズルズルと追いつかれ、追い越されてもおかしくない展開を鈴木博が凌ぎ切った。

試合後与田監督は開幕のクローザーを鈴木博でいくと明言。入団時からクローザーになりたいと主張してきた異色の右腕はまたひとつ憧れのキンブレルに近づいた。なによりチームは勝ち、そして亀澤のエラーも帳消しになった。

奥川と鈴木博。ほぼ同じ時刻に同じようにチームを救った2人の投手に、エースとクローザーの役割は違えど一流の真髄を垣間見た。