ちうにちを考える

中日ドラゴンズを浅く薄く考えます

変革の象徴・加藤匠馬

6日のDeNA戦に続いて加藤匠馬が1試合通しでマスクを被って勝利をつかんだ。しかも5人の投手をリードして4安打零封。心配されていたキャッチングの技術不足もオープン戦を通じて今のところ目立ったミスはなく、むしろ期待していなかった打撃でタイムリーを放つなど試合を重ねるごとに信頼度が高まっている。

それでいて今日の先発は開幕投手の最有力笠原。ちょうど1週間前に6回無安打という完璧な投球をリードした大野奨ではなく、敢えて加藤にマスクを被らせたことから、今年の開幕バッテリーは笠原-加藤の組み合わせでほぼ決まりとみて間違いないだろう。

 

試合の裏の「スポ音」(CBCラジオ)でも確定的な情報が放送されて話題を呼んでいる。若狭アナによれば取材した中村武志バッテリーコーチ本人がこう断言したというのだ。

「開幕まで怪我をしない限りは、いま勝ち抜いた3人(加藤、木下、大野奨)で行く。よほどヘタをこかない限りは入れ替えない」

ここで言う“ヘタをこく”とは中村コーチ曰くディフェンス有利なナゴヤドームで1イニングに大量失点を喫することだそうだ。逆に言えば、それさえなければシーズン終了までこの3人で行くとも明言したという。

 

松井雅人は競争に負けたのか

 

そうなると気になるのが昨年まで実質的な正捕手を務めた松井雅人の処遇だ。先週、満を持して1軍合流したのも束の間、阪神2連戦が終わるとたちまち再降格して2軍戦に出場している。要するに制球難の藤浪対策として左打者が必要だっただけとの見方が強く、上記の中村コーチの言い回しからも現状では1軍の戦力として計算されていないことがうかがえる。

球団企画のイケメン投票でも上位に入るなど女性人気が高い松井雅。昨季は課題の打撃でもそこそこの数字を残し、FA加入した大野奨を押し退けて「なんだかんだで正捕手松井雅」の面目躍如を果たしたが、契約更改ではキャリアハイの92試合出場にも関わらず現状維持の評価を下され、意気消沈といった表情で会見に臨む姿が印象的だった。

だが新たにコーチ就任した名捕手2人の目は球団以上に厳しかったようだ。中村コーチが就任早々ぶち上げた「勝てる捕手を育てる」という方針は、暗に松井雅が“勝てない捕手”であることを指していたとも取れる。伊東コーチも正捕手の条件として「評価の対象は完全に守備。どれだけ失点を防ぐか。盗塁を許さないか」と総合的な守備力を求めており、やはり昨季リーグ最下位の盗塁阻止率.170に終わった松井雅は厳しいと言わざるを得ない。

 

我慢と覚悟を伴うチーム大変革

 

6年連続Bクラスのこのチームは小手先のマイナーチェンジくらいでは足りず、根本から戦力の洗い直しを行い、大胆に一からチームを作り直す覚悟が必要となる。

その点では松井雅は2014年の開幕カードでスタメンマスクを被り、そこから5年間、一皮剥ければすぐにでも正捕手に定着できるというところから決め手に欠けてここまで来てしまった、いわば競争に勝ちきれなかった選手だ。ならば実績は無くとも明確な武器を持つ加藤を手に塩かけて育てようというのは自然な流れ。松井雅が5年かけて掴みとれなかった正捕手の座に、今度は加藤が挑戦する番だ。

 

思い起こせば31年前、怪我の多い中尾孝義、晩年に差し掛かっていた大石友好に代わる正捕手に抜擢されたのが中村武志その人だった。まだ無名だった中村が当時の星野監督からの壮絶なしごきに耐え抜いたのは有名な話だ。この年は主力の平野謙、大島康徳を放出し、ルーキーの立浪和義を遊撃に抜擢するなど大胆な若返りを半ば強制的に断行して見事に優勝を果たしたわけだが、今のドラゴンズもそれくらいラディカルにチームをひっくり返す覚悟が必要なのだろう。

加藤の積極起用や、「山井と吉見はローテの軸に期待しちゃいけない」というシビアな言葉から察するに、与田監督は既に2年後、3年後を見据えたチーム作りに取り掛かっている。もちろんその中心には根尾がいて、滝野がいて、藤嶋もいるはずだ。そのとき、果たして誰が正捕手として君臨しているのか。全ては加藤次第。2019年、変革の象徴たる加藤の闘いは開幕戦のプレイボールと共に始まる。