ちうにちを考える

中日ドラゴンズを浅く薄く考えます

フルイニング出場信仰を考える

 

ひと昔前のサラリーマンは無遅刻無欠勤が美徳だと考えていたらしい。無遅刻はともかくとして無欠勤というのは、もちろん有休休暇をノーカンにしているわけではなく正真正銘の無欠勤を意味する。会社を休むのは忌引きの際だけ。暑い日も寒い日も、なんならインフルエンザにかかってもウイルスをばら撒きながら会社に尽くすのがビジネスマンの本望でございます-。

高度成長期に生まれた流行語「モーレツ社員」や、バブル期に一斉を風靡した栄養ドリンクのキャッチフレーズ「24時間働けますか?」が象徴するように、当時の日本人は文字通り休む間も無く働きまくった。日経平均株価が3万円を超え、日本は右肩上がりで成長し続けると誰もが信じていた時代。欠勤はまさしく悪だったのだ。

 

ところが寝食を忘れて働きまくったツケはすぐに回ってきた。バブル終焉と共に経済が停滞し、過労死、残業代未払い、パワハラといった負の側面が社会問題としてクローズアップされるようになった。1990年代の末にはかつて「24時間働けますか?」とビジネスマンを鼓舞したのと同じ栄養ドリンクのCMが、今度は坂本龍一が演奏するピアノの優しい音色をバックに「癒し」をキャッチフレーズにして話題を呼んだ。

“休むな”から“休もうよ”の時代へと、たった10年間で社会は劇的にシフトチェンジしたのだった。

 

アニキ金本が蘇らせた“休まない美徳”

 

一方でプロ野球の世界では社会の流れに逆行するように“休まない美徳”が再び蘇ろうとしていた。

かつて衣笠祥雄が「鉄人」と呼ばれた所以でもある連続試合出場をさらに上回る連続フルイニング出場を、カープの金本知憲が人知れず始めたのが1999年7月21日の事。奇しくもこの7月第3週のオリコンチャートで1位に輝いたのが坂本龍一の件の曲だった。

癒しの時代に現れた新たな鉄人は、衣笠の専売特許だった“休まない美徳”をヴァージョンアップさせ、鳥谷敬、田中広輔などそこを目標に掲げるフォロワーを生んでいる。

 

1999年7月第3週オリコンTOP10

1.ウラBTTB  坂本龍一

2.TOKYO  SADS

3.toi et moi  安室奈美恵

4.Fly  SMAP

5.フラワー  KinKi Kids

6.あの紙ヒコーキくもり空わって  19

7.なあなあ  SURFACE

8.INORI  HITOE'S 57MOVE

9.been so long  m-flo

10.この星空の彼方  岡本真夜

 

 

ヒトエゴナムーブwww

 

買った奴はご愁傷様だな

 

今井議員のソロもあったね

 

多香子のソロは?

 

別の意味でご愁傷様だね。やかましいわ

 

京田にフルイニング出場は必要ない

 

京田が鳥谷に憧れているのは有名な話。ドラフト指名時こそ「憧れは立浪さん」と機転の利いたお世辞をかましたものの、その後は何かと言うと鳥谷を引き合いに出し、今は亡き新潮45(2017年12月号)では「鳥谷さん、好きです!鳥谷信者です!」と溢れんばかりの鳥谷愛を隠す気もなく吐露していた。

 

 

そして京田が特にこだわっているのが、どうも全試合フルイニング出場のようなのだ。鳥谷のフルイニング出場が止まった時は「自分の事のようにショックだった」と話し、今年の4月25日に代打を送られた際には「切り替えられない」「心にポッカリ穴が空いた」と尋常じゃなくショックを受けていた。その京田が来季から鳥谷と同じ背番号1を付ける事が決まり、真っ先に目標に掲げたのはやはりフルイニング出場だった。中スポは仰々しく「京田 鉄人になる」と見出しを付けたが、やめてくれよと思ったのは私だけではないはずだ。

 

それはやはり金本、鳥谷の両人がどれだけ無理を重ねて、時にはチームに迷惑をかけながらこの記録を伸ばしてきたかを知っていれば当然の反応だろう。メジャーでは大してクローズアップされないこの記録に日本のプロ野球選手が怪我を押しながらこだわる姿はまるでかつてのビジネスマンを彷彿とさせ、心身のケアに重きを置く昨今の球界の傾向から見ても、やや不自然に映る。

 

見本にすべきは鳥谷より坂本勇人

 

会社員が体調が優れなければ欠勤するように、レギュラー野手も深刻なスランプに陥ったり心身の不調を感じれば休養を取るべきだ。フルイニング出場にこだわるあまりチームの足を引っ張るようでは本末転倒。ファンとしては記録より勝利を優先して欲しいのは当たり前で、いわば究極の自己満足である個人の連続出場のために指揮官が忖度するなんて事は本来であればちゃんちゃらおかしな話である。

その点でいえば坂本勇人は2014年の段階で連続出場が途切れていて、それ以降はちょっとした違和感でも大事をとって欠場・交代するなど無理せず休養を取って安定した成績を残し続けている。原監督は出続ける事がやがて呪縛となり、イヤでも外す事ができなくなるのを避けたかったのだろう。

晩年の金本が送球すらおぼつかなかったように、鳥谷が穴だらけの守備範囲でショートを守ったように、坂本も連続出場にこだわっていたら今ごろ腰痛を悪化させながら無理していたかもしれない。

 

幸い京田のフルイニング出場はまだ1年にも満たない。今ならまだ間に合う。京田が見本にすべきは鳥谷より坂本ではないだろうか。